最近、階段の上り下りがきつくなった。ペットボトルの蓋が開けにくくなった ふと鏡を見た時、太ももやふくらはぎが以前より細くなった気がする。
60代を迎えて、このような体の変化を感じていませんか。 それは単なる年齢のせいだけではなく、筋肉量が急激に減少しているサインかもしれません。
人間の筋肉量は、何もしなければ40代頃から徐々に減り始め、60代以降はそのスピードが加速します。筋肉が落ちると、転倒や骨折のリスクが高まるだけでなく、糖尿病などの生活習慣病や、認知症のリスクも上がってしまうことが分かっています。
しかし、怖がる必要はありません。筋肉は何歳からでも、適切な対策を行えば維持・強化することができる臓器です。90代の方でも筋トレで筋肉が増えたというデータもあるほどです。
60代で急に筋肉が落ちる原因とは?サルコペニアの正体
まず敵を知ることから始めましょう。なぜ60代になると急に筋肉が落ちやすくなるのでしょうか。医学的にはこの状態をサルコペニア(加齢性筋肉減弱症)と呼びます。
ホルモンバランスの変化と活動量の低下
筋肉の合成を促すホルモンは加齢とともに減少します。これに加え、定年退職や子育ての終了などで外出機会が減り、日常的な活動量が低下することが大きな要因です。 動かないでいると、体は筋肉を維持する必要がないと判断し、エネルギー節約のために筋肉を分解してしまいます。これが2日寝込んだだけで足腰が立たなくなる理由の一つです。
栄養不足(新型栄養失調)
意外かもしれませんが、飽食の時代と言われる現代でも、高齢者の多くが栄養不足に陥っています。 あっさりした食事を好むようになり、肉や魚、卵などのタンパク質摂取量が減ってしまうのです。筋肉の材料となるタンパク質が不足した状態で運動をしても、筋肉はつきません。むしろ分解が進んでしまうこともあります。
社会的なつながりの減少
人との会話や交流が減ると、外出する意欲そのものが湧かなくなります。 心と体はつながっています。社会参加の機会が減ることは、結果的に身体活動の減少を招き、筋肉の衰えを加速させる隠れた要因となっています。
筋肉の衰えを防ぐ!食事でできるタンパク質摂取の対策
運動と同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが食事です。筋肉を落とさないためには、何をどう食べれば良いのでしょうか。
毎食「片手一杯」のタンパク質を
筋肉の材料であるタンパク質は、体に貯めておくことができません。そのため、朝・昼・晩の3食それぞれで均等に摂ることが重要です。 目安は、毎食片手の手のひらに乗るくらいのサイズ(約20g)のタンパク質源を食べることです。 朝は卵と納豆、昼は焼き魚、夜はお肉、といった具合に意識してみましょう。
運動後30分以内のゴールデンタイム
運動をした直後は、筋肉が栄養を欲している状態です。このタイミングでタンパク質を摂取すると、効率よく筋肉に変えることができます。 激しい運動の後でなくても、散歩や家トレの後には、牛乳や豆乳、あるいはヨーグルトなどを摂る習慣をつけると良いでしょう。
ビタミンDを意識する
ビタミンDは、筋肉の合成を助け、骨を強くする働きがあります。 鮭やサンマなどの魚類、キノコ類に多く含まれています。また、日光を浴びることでも体内で生成されるため、天気の良い日に外を散歩するのは一石二鳥の対策と言えます。
60代におすすめ!自宅でできる筋肉対策の運動3選
それでは、いよいよ実践編です。 ジムに通う必要はありません。自宅で、しかも安全にできる運動で十分に筋肉は維持できます。今回は特に重要な下半身の筋肉をターゲットにした3つの運動をご紹介します。
椅子スクワット(太もも・お尻の強化)
スクワットは筋トレの王様ですが、間違ったフォームでやると膝を痛めます。椅子を使うことで安全に行いましょう。
具体的な手順
- 安定した椅子の前に立ち、足は肩幅より少し広めに開きます。つま先は少し外側に向けます。
- お尻を後ろに引きながら、椅子に座る寸前までゆっくりと腰を下ろします。
- 椅子に座らずに(軽くお尻が触れる程度で)、太ももの力を使って立ち上がります。
- 膝がつま先より前に出ないように注意してください。

かかと上げ(ふくらはぎの強化)
ふくらはぎは第二の心臓。ここを鍛えることで血流が良くなり、歩く力が強くなります。
具体的な手順
- 椅子の背もたれや壁に手を添えて立ちます。
- 背筋を伸ばしたまま、かかとを高く上げます。親指の付け根に体重を乗せるイメージです。
- ふくらはぎに力が入った状態で1秒キープし、ゆっくり下ろします。
- かかとが床につくギリギリで止め、また上げると効果アップです。

片足立ち(バランス能力・骨の強化)
片足立ちは、単にバランス感覚を養うだけでなく、足の付け根の骨に負荷をかけることで骨粗鬆症の予防にもなります。
具体的な手順
- 転倒防止のため、必ず壁やテーブルの近くで行います。
- 片足を床から5〜10cm程度浮かせます。
- 背筋を伸ばし、軸足一本で立ちます。不安な場合は指一本だけ壁に触れておきます。
- 左右それぞれ1分間行います。

60代からは「脳」も一緒に鍛えることが重要
筋肉対策と同時に意識してほしいのが、脳の健康です。 筋肉を動かす指令を出しているのは脳です。脳が元気でなければ、体をスムーズに動かすことはできません。
デュアルタスクで一石二鳥
おすすめなのが、運動しながら頭を使うデュアルタスク(二重課題)トレーニングです。 例えば、かかと上げをしながら今日のニュースを思い出す、散歩をしながら目に入った花の名前を言う、といった具合です。 これにより、運動機能だけでなく、記憶力や判断力といった認知機能も同時に刺激され、将来的な認知症予防にもつながります。
楽しむことが継続の秘訣
義務感でやる運動は続きません。 好きな音楽を聴きながら、友人と電話しながら、あるいはオンラインの教室で仲間と一緒に。 楽しむことで脳内にはドーパミンなどの良いホルモンが分泌され、運動の効果も高まります。60代からの健康づくりは、頑張りすぎず、楽しむことを最優先にしましょう。
まとめ:今日から始める対策が、10年後の自分を支える
60代で筋肉が落ちることは自然なことですが、対策次第でそのスピードを遅らせ、逆に強くすることも可能です。
- タンパク質をしっかり摂る
- 椅子スクワット
- かかと上げ
- 片足立ち
まずはこの4つの中から、できそうなものを一つ選んで今日から始めてみてください。 三日坊主でも構いません。思い出したらまた始めれば良いのです。その繰り返しが、確実にあなたの筋肉を守り、10年後も自分の足で旅行に行ける未来を作ります。
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