- 最近、以前より疲れやすくなった気がする
- 買い物に行って帰ってくると、ぐったりしてしまう
- なんとなく、外出するのが面倒になってきた
60代を迎えて、このような体の変化を感じることはありませんか? もし心当たりがあるなら、それは「フレイル(虚弱)」の前兆かもしれません。
フレイルとは、健康な状態と、介護が必要な状態の中間に位置する、心身の活力が低下した状態のことです。 放置すると、将来的に寝たきりや認知症のリスクが高まってしまいますが、適切な対策を行えば、再び健康な状態に戻ることができる「可逆的な」状態でもあります。
その鍵を握るのが、適切な「運動プログラム」です。
「運動」と聞くと、ジムに通ったり、きついトレーニングを想像したりするかもしれませんが、そんな必要は全くありません。 フレイル予防に最も効果的なのは、自宅で、無理なく、楽しみながら続けられる運動を生活の一部にすることです。
なぜ「フレイル予防」に運動が不可欠なのか?
フレイルの主な原因は、加齢による筋肉量の減少(サルコペニア)と、それに伴う活動量の低下です。この悪循環を断ち切るために、運動は最も強力な武器となります。
- 筋肉量の維持・増加: 適切な運動は、何歳からでも筋肉を増やし、体を支える力を強くします。
- 食欲の増進: 体を動かすとお腹が空き、栄養バランスの良い食事が美味しく食べられるようになります。これが筋肉の材料になります。
- 社会参加の促進: 体が軽く動くようになると、外出や人との交流が楽しくなり、心の健康(社会的フレイル予防)にも繋がります。

自宅でできる!フレイル予防の基本運動プログラム
それでは、自宅で安全に取り組める基本的な運動プログラムをご紹介します。 ポイントは「下半身の筋力」と「バランス能力」を重点的に鍛えることです。これらは、歩行や転倒予防に直結する重要な要素です。
プログラム1:椅子からの立ち座り(スクワット)
太ももとお尻の大きな筋肉を鍛え、立つ・歩く力を強化します。椅子を使うことで、膝への負担と転倒リスクを最小限に抑えられます。
具体的な手順
- 安定した椅子の前に立ち、足は肩幅より少し広めに開きます。
- お尻を後ろに引きながら、椅子に座る動作をゆっくり行います。
- お尻が座面に軽く触れるか触れないかのところで止め、太ももの力で立ち上がります。
- 膝がつま先より前に出ないように注意しながら、3秒かけて座り、3秒かけて立つイメージで行います。
- 10回を1セットとし、1日2〜3セットを目安に行います。

プログラム2:かかと上げ(カーフレイズ)
「第二の心臓」と呼ばれるふくらはぎの筋肉を鍛えます。血流が良くなり、地面を蹴り出す力が強くなります。
具体的な手順
- 椅子の背もたれや壁に手を添えて立ちます。
- 背筋を伸ばしたまま、ゆっくりとかかとを高く上げます。親指の付け根に体重を乗せるように意識します。
- 一番高いところで、ふくらはぎに力を入れたまま1秒キープします。
- ゆっくりと下ろします。
- 20回を目安に行います。

プログラム3:片足立ち(バランス訓練)
バランス感覚を養い、ふらつきや転倒を予防します。骨に負荷がかかるため、骨粗鬆症の予防にも効果的です。
具体的な手順
- 転倒防止のため、必ず壁やテーブルの近くで行います。
- 片足を床から5〜10cm程度浮かせます。高く上げる必要はありません。
- 背筋を伸ばし、遠くを見ながら軸足一本で立ちます。不安な場合は指一本だけ壁に触れておきます。
- 左右それぞれ1分間キープします。
運動効果を高めるためのポイント
ただ運動するだけでなく、以下のポイントを意識することで、フレイル予防の効果をさらに高めることができます。
タンパク質をしっかり摂る
筋肉の材料となるタンパク質が不足していると、いくら運動しても効果が出にくいばかりか、かえって筋肉が分解されてしまうこともあります。 肉、魚、卵、大豆製品、乳製品を毎食片手一杯分は食べるように意識しましょう。特に運動後は、牛乳や豆乳などを飲むと効果的です。
デュアルタスク(ながら運動)を取り入れる
運動しながら頭を使う「デュアルタスク」は、身体機能だけでなく、認知機能の維持・向上にも非常に有効です。 例えば、足踏みをしながらしりとりをする、かかと上げをしながら好きな歌を歌う、といった具合です。楽しみながら行うことが脳への良い刺激になります。
仲間と一緒に続ける
一人で黙々と続けるのは難しいものです。 家族や友人と一緒に運動したり、地域の体操教室やオンラインのフィットネスコミュニティに参加したりして、励まし合える仲間を作ることで、継続率がグッと上がります。
まとめ:今日の一歩が、未来の自分を支える
フレイル予防のための運動プログラムについて解説しました。
- 椅子からの立ち座り
- かかと上げ
- 片足立ち
これらはどれも、特別な器具を必要とせず、自宅で、テレビを見ながらでもできる基本的な運動です。 大切なのは「完璧にやること」ではなく「続けること」です。
今日は5回しかできなかった、でも昨日はやらなかったから偉い! そんな風に自分を褒めながら、無理なく生活に取り入れていってください。その小さな積み重ねが、5年後、10年後のあなたが笑顔で過ごすための土台となります。
もし、一人では続けられるか不安、専門家のサポートを受けながら楽しく健康づくりをしたいとお考えであれば、シニア向けのオンラインウェルネスサービスを活用するのも賢い選択です。 脳科学に基づいたプログラムと、温かいサポートが、あなたのフレイル予防を強力に後押しします。




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