「最近、同世代の人についていけなくなった」「横断歩道を渡りきるのがギリギリになった」 もしそんな変化を感じているなら、それは年齢のせいだけではないかもしれません。
まずは、以下のチェックリストでご自身の状態を確認してみましょう。
- 横断歩道の青信号が点滅するまでに渡りきれないことがある
- 平らな場所でもつまずくことが増えた
- 階段の上り下りが以前より億劫で、手すりが必要だ
- 買い物袋を持って歩くのが以前よりつらい
- 「歩くのが遅い」と家族や友人から指摘された
なぜ歩くのが遅くなるのか?3つの主な原因
歩行速度の低下には、主に3つの原因が考えられます。単なる筋力の問題だけではないことに注意が必要です。
1. 筋力とバランス能力の低下
加齢とともに筋肉量が減少する現象を「サルコペニア」と呼びます。特に太ももやふくらはぎの筋肉が衰えると、足を前に踏み出す力や、地面を蹴る力が弱まり、歩幅が狭くなります。また、バランス能力が低下すると、転倒を恐れて無意識に「すり足」のような慎重な歩き方になり、結果として速度が遅くなります。
2. 関節の痛みや可動域の制限
膝や股関節に変形性関節症などの痛みがあると、痛みを避けるために歩き方が不自然になり、スピードが出せなくなります。また、背中が丸まる(円背)と重心が前に崩れやすくなり、安定して歩くことが難しくなります。
3. 脳の認知機能の低下
意外と知られていないのが「脳」との関係です。歩くという行為は、周囲の状況を見て、目的地を認識し、手足をバランスよく動かすという、高度な脳の情報処理が必要です。脳の司令塔としての機能が低下すると、歩行のリズムが乱れたり、速度が遅くなったりすることがあります。

放置は危険?歩行速度低下に潜むリスク
「歳だから仕方ない」と放置してしまうと、思わぬリスクを招く可能性があります。
転倒や骨折のリスク
歩行速度が遅く、足が上がっていない状態は、わずかな段差でのつまずきや転倒の原因になります。高齢者の転倒は、大腿骨骨折などを引き起こし、そのまま寝たきりになってしまうケースも少なくありません。
認知症リスクとの関連
近年の研究では、歩行速度の低下が認知症の初期サインである可能性が指摘されています。 ある調査では、歩行速度が遅い高齢者は、速い高齢者に比べて認知症の発症リスクが高いという結果も報告されています。歩く速さは、身体の健康だけでなく、脳の健康状態を映す鏡とも言えるのです。
(出典:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット『歩行速度は認知機能低下を予測』より) https://www.tyojyu.or.jp/net/topics/news/2017/82-hokosokudo.html
今日からできる!歩く速さを取り戻す5つの対策
歩行機能を維持・改善するために、自宅で無理なくできる対策を5つ紹介します。
1. 下半身の筋力を強化する(スクワット)
歩行の要となる太ももの筋肉を鍛えます。
- 椅子の背もたれや手すりにつかまり、足を肩幅に開いて立ちます。
- 背筋を伸ばしたまま、お尻を後ろに引くようにゆっくりと膝を曲げます。
- 太ももに力が入っているのを感じたら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
- これを1日10回〜20回を目安に行います。膝がつま先より前に出ないように注意しましょう。
2. 「大股」を意識して歩く
普段の歩行で、意識的に歩幅を「あと5cm」広げてみましょう。大股で歩くことで、腸腰筋(足を持ち上げる筋肉)が刺激され、自然と背筋も伸びやすくなります。視線を遠くに置くこともポイントです。
3. バランス感覚を養う(片足立ち)
転倒予防に効果的なトレーニングです。
- テーブルや椅子の背など、安定したものにつかまります。
- 片足を床から5cm〜10cm程度上げ、1分間キープします。
- 反対の足も同様に行います。
- 1日3セットを目安に行いましょう。
4. タンパク質をしっかり摂る
運動の効果を高めるためには、筋肉の材料となる栄養素が不可欠です。肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質を、毎食片手のひら分程度を目安に摂取しましょう。特に運動後の食事は筋肉の修復に効果的です。
5. 「デュアルタスク」で脳と体を同時に鍛える

「歩きながら計算する」「足踏みしながらしりとりをする」といった、2つのことを同時に行う「デュアルタスク(二重課題)」トレーニングは、歩行に必要な身体機能と認知機能を同時に刺激する非常に有効な方法です。
しかし、一人で運動と脳トレを同時に行うのは難しく、間違ったフォームで行うと転倒の危険もあります。また、自分一人ではどうしてもサボりがちになってしまうという悩みもよく聞かれます。
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無理なく続けることが一番の近道
歩く速度を取り戻すには、一朝一夕の努力ではなく、日々の積み重ねが大切です。最初は少ない回数から始め、体調に合わせて徐々に負荷を上げていきましょう。
また、痛みがある場合や体調が優れない場合は無理をせず、医師や専門家に相談してください。 「最近歩くのが楽しくなってきた」と思える日が来るように、まずは簡単な運動から始めてみてはいかがでしょうか。






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