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物忘れが気になる60代へ:脳とカラダを一緒に鍛える運動習慣

「最近、人の名前がすっと出てこない」
「買い物に行ったのに、何を買うか忘れてしまった」

60代を迎え、このような経験が増えてきたと感じていませんか?若い頃にはなかった些細な物忘れに、「もしかして、このまま認知症になってしまうのでは…」と、漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ご安心ください。60代の物忘れは、多くの場合、加齢による自然な変化です。そして最も重要なことは、物忘れは運動によって改善が期待できるということです。

この記事では、71もの研究結果から明らかになった科学的根拠に基づき、物忘れ改善に効果的な運動方法を具体的にお伝えします。自宅で無理なく始められ、楽しく続けられる方法ばかりです。将来の自分のために、今日からできる小さな一歩を一緒に踏み出してみませんか?

目次

第1章:60代の物忘れ、それって本当に「年のせい」?

物忘れが増えると、誰もが認知症の心配をしてしまいます。しかし、加齢による「正常な物忘れ」と、病気である「認知症による物忘れ」は異なります。まずはその違いを正しく理解し、ご自身の状況を客観的に見つめてみましょう。

1-1. 加齢による物忘れと認知症の違い

一番大きな違いは、「体験の一部を忘れているか、全体を忘れているか」です。以下の表で具体的な違いを確認してみましょう。

項目加齢による正常な物忘れ認知症による物忘れ
忘れ方体験の一部を忘れる(例:朝食のメニューを忘れる)体験の全体を忘れる(例:朝食を食べたこと自体を忘れる)
思い出す力ヒントがあれば思い出せるヒントがあっても思い出せない
自覚物忘れを自覚している物忘れを自覚していないことが多い
日常生活支障はほとんどない支障が出ることがある

もしあなたの物忘れが「正常な物忘れ」に当てはまるなら、過度に心配する必要はありません。しかし、だからといって何もしなくて良いわけではありません。この段階から適切な対策を始めることが、将来の認知症リスクを減らす鍵となります。

1-2. 60代の脳で何が起こっているのか

私たちの記憶力は、残念ながら20代をピークに少しずつ低下していきます。特に60代になると、新しいことを覚える力よりも、蓄えた知識や経験を「思い出す力(想起能力)」の低下が顕著になると言われています。

「あれ、あの俳優さんの名前、喉まで出かかっているのに…」という経験は、まさにこの「思い出す力」の一時的な不調です。記憶そのものが消えたわけではないので、時間が経てばふと思い出せることも多いのです。

重要なのは、脳の機能は筋肉と同じで、何歳からでも鍛えることができるということです。適切な刺激を与え続けることで、脳の神経ネットワークを活性化させ、記憶力を維持・向上させることが可能なのです。

第2章:なぜ運動が物忘れ改善に効果的なのか

「脳を鍛えるなら、パズルや計算ドリルの方が良いのでは?」と思うかもしれません。もちろんそれらも有効ですが、近年の研究では、身体を動かす「運動」こそが、脳機能の維持・改善に極めて効果的であることが明らかになっています。

2-1. 科学的根拠:71の研究が証明した運動の効果

2021年に中国・北京大学の研究チームが発表した、非常に信頼性の高い研究があります。この研究では、過去に行われた71もの臨床試験、合計5,606人のデータを統合して分析しました。その結果、以下のことが明らかになりました。

どのような運動であっても、全般的な認知機能の維持や改善に効果を認めました。特にレジスタンス運動は、全般的な認知機能の維持や改善に効果的でした。

つまり、ウォーキングのような有酸素運動はもちろん、スクワットなどの筋力トレーニング(レジスタンス運動)が、物忘れの改善に特に高い効果を発揮することが科学的に証明されたのです。

2-2. 運動が脳に与える3つの効果

では、なぜ運動が脳に良いのでしょうか?そのメカニズムは主に3つあります。

  1. 脳への血流増加: 運動によって心臓のポンプ機能が活発になり、脳に送られる血液の量が増えます。これにより、脳細胞に十分な酸素と栄養が供給され、脳全体が活性化します。
  2. 脳の成長因子(BDNF)の増加: 運動をすると、脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が脳内で分泌されます。このBDNFは「脳の栄養」とも呼ばれ、新しい神経細胞の成長を促したり、既存の神経細胞を保護したりする働きがあります。
  3. 生活習慣病の予防: 運動は、糖尿病や高血圧といった生活習慣病の予防・改善に繋がります。これらの病気は、脳の血管にダメージを与え、認知症のリスクを高めることが知られています。運動によって生活習慣病をコントロールすることは、間接的に脳を守ることにもなるのです。

2-3. 「脳とカラダを一緒に鍛える」とは?

さらに効果を高める方法として注目されているのが、デュアルタスク(二重課題)です。これは、「運動(カラダ)」と「頭を使う課題(脳)」を同時に行うトレーニング方法です。

例えば、「計算しながらウォーキングする」「しりとりをしながら足踏みする」といった活動がこれにあたります。運動を司る「運動野」と、思考や判断を司る「前頭葉」を同時に刺激することで、脳の様々な領域を結ぶ神経ネットワークが強化され、認知機能全体が向上すると考えられています。

第3章:物忘れ改善に効果的な3つの運動

ここからは、ご自宅で今日から始められる具体的な運動メニューをご紹介します。「レジスタンス運動」「デュアルタスク運動」「有酸素運動」の3つをバランス良く組み合わせることがポイントです。

3-1. レジスタンス運動(筋トレ)

研究で最も効果が高いとされた筋トレ。特に、全身の筋肉の約7割が集まる下半身を鍛えることが、効率的で安全です。

おすすめメニュー:椅子スクワット

  1. 安定した椅子を準備し、浅めに腰掛けます。
  2. 両腕を胸の前で組み、ゆっくりと立ち上がります。
  3. お尻を後ろに突き出すように、ゆっくりと座ります。完全に座る直前で止めるとさらに効果的です。
  • 回数・頻度: 10回を1セットとし、1日に2セットを目安に。毎日ではなく、2〜3日に1回のペースで行いましょう。筋肉が回復する時間も大切です。
  • ポイント: 膝がつま先より前に出ないように注意し、呼吸を止めないようにしましょう。

3-2. デュアルタスク運動(脳とカラダを同時に使う)

脳とカラダを同時に使って、効率よく脳を活性化させましょう。楽しみながら行うことが続けるコツです。

おすすめメニュー:ウォーキング+しりとり

  1. 室内または屋外で、リズミカルにウォーキング(またはその場で足踏み)を始めます。
  2. 同時に、しりとりをします。一人で「りんご、ごりら、らっぱ…」と続けても良いですし、ご家族や友人と一緒に行うとさらに楽しめます。
  3. 慣れてきたら、「動物の名前」「食べ物の名前」など、テーマを設けると難易度が上がります。
  • 時間: 5分〜10分程度から始めてみましょう。
  • ポイント: 最初は動きがぎこちなくなっても構いません。歩くことよりもしりとりに集中しすぎないように、リラックスして行いましょう。転倒には十分注意してください。

3-3. 有酸素運動(ウォーキング)

最も手軽で基本的な運動です。心肺機能を高め、脳への血流を促します。

おすすめの方法:少し早歩きのウォーキング

  • 時間・頻度: 1日30分程度を目安に、できるだけ毎日続けましょう。
  • ペース: 少し息が弾み、軽く汗ばむ程度が理想です。「おしゃべりしながらでも、なんとか続けられる」くらいのペースを意識してみてください。
  • ポイント: 正しい姿勢で、腕を軽く振って歩きましょう。天気が悪い日は、室内での足踏みでも十分効果があります。水分補給も忘れずに行いましょう。

第4章:60代が運動を続けるための5つのコツ

「運動が良いのは分かったけど、続けられるか不安…」そう感じるのは、あなただけではありません。三日坊主で終わらせないための、ちょっとしたコツをご紹介します。

  1. 完璧を目指さない: 「毎日30分」と決めつけず、「今日は10分だけ」「今週は3日できた」と、できた自分を褒めてあげましょう。
  2. 楽しみを見つける: 好きな音楽を聴きながら、景色の良い公園を歩く、友人とのおしゃべりを楽しむなど、運動に「楽しみ」をプラスしましょう。
  3. 記録をつける: カレンダーにシールを貼る、歩数計アプリを使うなど、頑張りを目に見える形にすると、達成感が湧き、モチベーションに繋がります。
  4. 生活の中に組み込む: 「朝食後に5分だけ足踏みする」「テレビを見ながらスクワットする」など、生活の一部として習慣化してしまうのが成功の秘訣です。
  5. 専門家のサポートを受ける: 一人で続けるのが難しい場合は、専門家の力を借りるのも賢い選択です。正しい方法を学び、励まし合う仲間がいれば、運動はもっと楽しく、効果的なものになります。

第5章:「脳ニモフィットネス」で、楽しく続ける運動習慣

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脳ニモフィットネスとは

「脳ニモ」は、この記事でご紹介したデュアルタスクの原理を取り入れた、脳とカラダを一緒に鍛える専門プログラムです。脳研究20年の医学博士が監修した科学的根拠に基づくメソッドで、あなたの健康習慣を力強くサポートします。

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  2. 少人数制で丁寧な指導: 一人ひとりの体力や目標に合わせた丁寧な指導が魅力です。分からないこともその場で気軽に質問でき、正しいフォームで効果的に運動できます。
  3. 家族も安心の見守りサポート: 参加状況をレポートとしてご家族に共有する「見守りサポート」も充実。遠方にお住まいのご家族も、あなたの頑張りを安心して見守ることができます。

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まとめ

60代からの物忘れは、決して見て見ぬふりをして良いサインではありませんが、悲観する必要もありません。科学的に効果が証明された「運動」という素晴らしい解決策があるからです。

  • レジスタンス運動で力強く脳を刺激し、
  • デュアルタスク運動で脳の神経ネットワークを鍛え、
  • 有酸素運動で脳の血流を促す。

この3つの運動を、無理のない範囲で生活に取り入れることが、10年後、20年後のあなたの健康を守るための最も確実な投資です。

一人で悩まず、ぜひ一度、私たち専門家にご相談ください。あなたの「変わりたい」という気持ちを、全力でサポートします。

参考文献

  1. 厚生労働省. “e-ヘルスネット:加齢とエネルギー代謝”.
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-004.html
  2. Huang, X., et al. (2021).
    “Comparative efficacy of various exercise interventions on cognitive function in patients with mild cognitive impairment or dementia: A systematic review and network meta-analysis”. Journal of Sport and Health Science.
  3. 認知症ねっと. “デュアルタスクで認知症予防”
    https://info.ninchisho.net/prevent/p60

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この記事を書いた人

シニアライフ研究家 / 健康情報ナビゲーター
「人生100年時代をどう楽しむか」をテーマに、世界中の健康論文や最新メソッドを研究中。40代の働き盛りならではの視点で、親世代に本当に勧めたい「科学的で無理のない健康法」を厳選して発信します。

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